ブラックハーツ
(BLACKHEARTS)


 最近になるまで、ブラックハーツの起源に関する正確な詳細は事実よりも噂の方が多いものであった。それを訊ねられた際の彼等の標準的な回答は、自分達は辺境に取り残された元・星間連盟の部隊から誕生したものである、というものであった。2866年にシュタイナー家はこの傭兵部隊を雇用し、自国の辺境国境の警護を命じた。そして、そこでの海賊とテロリスト達の活動は劇的に減少する事となった。3028年初期、ライラの諜報は遂に、この傭兵部隊の起源が星間連盟のスペシャル・アームド・サービス部隊(SAS)――星間連盟正規軍に配属されたエリートの対テロ戦闘部隊――にある事を明らかにする情報を発見した。この暴露に直面する事となったジョンソン大佐は、自分の部隊の起源が第77SOGであるのを認めた。そして、この告白はこの連隊の“ゲッターデメルンク作戦”への参加を確実なものにし、その作戦にて3028年8月、彼等は惑星“バジリアーノ”にて第24アークトゥルス防衛軍がDCMSの夜行兵団を打ち負かすのを支援した。惑星“バジリアーノ”の後は、ブラックハーツは惑星“クーフシュタイン”を奪取し、3029年中期には惑星“エンガディン”を奪取した(後者の惑星に於いては第26ライラ防衛軍の支援もしていた) 第4次継承権戦争後、ブラックハーツは自由世界同盟と新たに契約を結び、ゲレロ作戦が実施された最中にも彼等は依然として自由世界同盟の契約下で働いており、その際には惑星“カポラ”にてカペラのゲリラ達と共に彼等は戦った。そして、そこのライラの駐留部隊を倒した後で、そのカペラのゲリラがチャンチェン・デ・グアンのテロリスト達であるのに気付いた時に彼等は突然に持ち場放棄をしている。しかし、この事実の発覚と(マーリック)総帥の反・傭兵感情の増大にも拘らず、ブラックハーツはゲレロ作戦後に自由世界同盟とのその契約を更新したのであった。
 3068年11月、ブラックハーツが訓練演習の為に惑星“ワサト”に展開したその時、レイモンド装甲機兵団とヘビーヘル・レイザーズを搭載した降下船群が惑星首都のワサト・プライムにあるドロップポートに着陸した。そして、マーカス・ジョンソン大佐は、次の日に予定された重要な会合への出席を求める惑星“ワサト”統治者のハワード・ロング公爵からの呼び出しを受けた。ジョンソン大佐は自分の副官と共に時間通りに到着したが、警備によって彼の副官は閉め出され、彼は会合への単独での出席を強いられた。この会合についての正確な詳細は未だに不明であるが、その結果については最近になり一般に知られるものとなっている。伝えられる所によれば、レイモンド装甲機兵団とヘビーヘル・レイザーズによる威嚇行動の下、ロング公爵はジョンソン大佐に彼と彼の部隊を即時撤退するよう通告したそうである。そして、伝えられる所によれば、ジョンソンはその命令を拒否し、自分とLCCCの契約を無効にする権限はロングにはない、との発言したとの事である。次に、その場にいたブレイク教徒の代表者がブラックハーツ司令官に対して通告した――お前にはこの事態に対する選択の余地がない、と。そして、伝えられる所によれば、それにより発生した言い争いはジョンソン大佐とそのブレイク教徒の准司教、両者の死という結果を生んだ、との事である。しかし、ジョンソン大佐は警備員達に気付かれる事なく、隠し持った盗聴器を通じて副官に対してその事件の成り行き全てを送信しており、その副官は自らが死ぬ前にそれをブラックハーツの次席指揮官であるグレン・ストライカー少佐に中継したのであった。これにストライカー少佐は部隊を完全な警戒態勢下に置き、“オペレーション・ブラックフューリー”――その雇用主の裏切りが起きた場合に備えてブラックハーツによりあらかじめ立案されていたと思われる計画――を実行に移した。
 自らの諜報に基づき行動をしたブレイク教徒の傭兵部隊達は自分達の基地から西進して、ブラックハーツが演習をしている地と思われるクロモメリク山脈とマグレガー・ブラックフォレストに向かった。レイモンド装甲機兵団――より軽量でありより機動力に優れているメック連隊――はブラックハーツを遅滞させる事を試みてヘビーヘル・レイザーズよりも先行したが、ストライカーの部隊を捕捉する事には失敗した。これにより休息を強いられる事となったレイモンド装甲機兵団はカレドン峡谷に野営地を作り、一方、ヘビーヘル・レイザーズは後衛部隊としてそこから2km離れた東方に野営をした。そして、現地時間0330時頃、ブラックハーツの重間接砲部隊は砲火を開き、レイモンド装甲機兵団の野営地に対人弾とFASCAM弾を大量に散布した。それと同時に、ブラックハーツのメック群は周囲の森林の隠れ場所から躍り出て、今や混乱状態に陥っているレイモンド装甲機兵団を攻撃した。ブラックハーツの装甲機兵隊も西から同時攻撃を仕掛けてレイモンド装甲機兵団の退路を塞ぐ一方、フライング・ライオンズはヘビーヘル・レイザーズが攻勢に打って出られるよりも前に彼等に対して掃射と爆撃を加えた。現地の夜明けの頃には、ブラックハーツの復讐から逃れる事ができなかったレイモンド装甲機兵団は事実上その存在を止めており、一方、手酷く叩かれたヘビーヘル・レイザーズはブラックハーツの第35竜機兵大隊の強襲に直面して撤退をした。その元々の戦力の40%に満たないものにまで減少したヘビーヘル・レイザーズは算を乱してワサト・プライムに後退し、ワード・オブ・ブレイクの第3師団という形で援軍が来るまでの間はそこに籠もり続けた。
 その2ヶ月の間を隠れつつ戦場からの回収品で自分達のユニットの修理を続けていたブラックハーツは、ブレイク教徒の軍勢を正面からの戦闘で撃退できる状態には全くなかった。代りに、続いての2年間に渡り彼等は効果的なゲリラ戦闘を遂行し、第3師団の明白な勝利を否定し続けた。しかしながら、このブラックハーツの粘り強さは、最終的には第3師団指揮官フェラーズ司教に、3071年1月に「ブラックハーツは完全降伏をせよ。さもなくば、自分はワサト・プライムとその35000人の住民達を核の炎の中に消し去るであろう」との最後通牒を発させるに至ったのであった。これにストライカーは自分の部隊を明白な死に追いやる事を拒否しつつ第3の選択肢を選び、山脈深くに隠されていた自分達の降下船群によってブラックハーツを脱出させた。しかし、これにより自分の勝利を否定される事となったフェラーズは、伝えられる所によれば、激怒し、何にせよ惑星の首都を破壊したとの事である。

ドラグーン・レーティング:

ブラックハーツ
 ブラックハーツの現在の位置と実兵力に関しては不明である。3071年1月に消え去って以来、その部隊や彼等が捕獲したブレイク教徒の航宙艦が宙域のどこに存在しているかを示す報告は全くないのであった。


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