デヴィル旅団
(DEVIL'S BRIGADE)


 インターステラー・エクスペディションズ(IE)――“傭兵考古学者集団”と貶されている私設の多国籍グループ――は独自の防衛部隊を保持している事で知られており、それ以外に様々な専門化している傭兵部隊を定期的に雇用する事でも知られている。貴重な発見物の防護をしたり辺境深部での長距離探査に於ける海賊や無法者達に対する護衛を提供したりする、IEの為に専従で働くそれらの軍事能力を持った少数の者達は、大抵の場合に於いて、数十年間もしくは数世紀間の歴史を通して血によって繋がった集団内の一族をその出身としていた。
 しかし、アレックス・ケラー少佐と彼に従う者達にとって、3066年、ライラ同盟のコアワード宙域でのペリフェリー・スターガードとの共同作戦の後に、それは突然に終りを迎える事となった。インターステラー・エクスペディションズと関連する事件で(常のものではないとしても)良くある様に、何が起きたかの正確な詳細については良く言っても不十分なものであり、最悪の場合は全く何も存在しないものである。しかし、その任務に於いて、その遠征部隊は謎の海賊集団とあの非常に畏怖されているバウンティ・ハンターの両方と遭遇したのではないかと思われる。だが、ペリフェリー・スターガードのアナポリス大佐はケラー少佐と彼の部下達をただただ称賛する一方で、その彼女でさえも何が起ったかについての説明をする事はしないのであった。
 ともかく、その不和の原因が何であったにせよ、IEは後腐れなくアレックス・ケラーと彼に従う者達との関係を絶った様である。既知宇宙で(噂が伝える所によれば)最も富裕な私営組織との結び付きが元々はあったにも拘らず、デヴィル旅団は言及に値する程の先端技術は殆ど持たずに惑星“ガラテア”に現れた。実際、デヴィル旅団の装備の大部分は数世紀前のものかつ溶接や固定ワイヤーで以て結合されている様に見えるものであり、この事は好奇心を持つ多くのレポーター達にそのケラーの離脱が低技術兵器への制限という代償を持ったものであったと結論付けさせるに至っている。
 “聖戦”の開始時、デヴィル旅団は惑星“ガラテア”にて仕事を探し求めていた。デヴィル旅団は波乱に満ちているであろう幾つかの大儲けできそうな契約に飛び付くのには――ワード・オブ・ブレイクの関与の噂と傭兵取引に於ける惑星“アウトリーチ”の喪失の影響がその意志決定のプロセスを鈍らせた為に――気が進まなかったが、3069年、遂には企業との警備契約を受け入れる事になった。惑星“ソン・ホア”に出立したデヴィル旅団は、EMP-6Sエンペラーという新たな派生型の最初の惑星外への出荷分が困難な状況下にあるLAAFに対して送られる丁度その時に、そのスターコープ・インダストリーズ社の製造ラインの防衛の任に就き、それ以来そこにいる。
 デヴィル旅団は、今の所はスカイア=ボーラン国境線での戦闘という最悪のものから逃れられているが、彼等は中心領域規模のスキャンダル映像会社に匹敵する様な惑星“ソン・ホア”現地人達からの好ましくない好奇の視線の的になっている。ケラー(彼は自分の部隊の“ガラテア”からの出立を明白に望んでおり、「戦争を見守る事以上に君達にとって有益なものはないのではないか」と発言する事で以て最終的にジャーナリスト達を沈黙させた)は、伝えられる所によれば、自分のデヴィル旅団の悪い意味での評判が新たな土地でも付いて回り旅団を注目の的にしている事を知って落胆しているとの事である。

ドラグーン・レーティング:

デヴィル旅団
 バトルアーマーを装備している歩兵部隊とそのバトルメックの大部分にインプルーヴドC3システムを装備している事の他に、デヴィル旅団が最新に追加したものも非常に古くかつ奇妙なものである――そして、この事はスキャンダル映像企業的な好奇の注目を更に高める事になっているのであった。3071年初期の惑星“ソン・ホア”の訓練演習の最中、アレックス・ケラーはいつものBNC-3Sバンシーではなく、年代物のグラディエイターを操縦しているのが目撃されているのである。
 そして、ブレイク教徒の“聖戦”によって作り出された軍需品への途方もない需要に応える努力の一環として、このライラ同盟内で2流から3流の間に位置しているメック製造工場がコスト削減の為に所謂“プリミティブ・バトルメック”の製造に着手しているのではないか、との噂がこの時以来巻き起っているものである。2439年にオリジナルのマッキーを誕生させる事となった旧式の工学技術を基にしているそれらの“プリミティブ・バトルメック”は、2460年頃により現代的なバトルメックの設計機が誕生した為に(大王家の大部分は地球帝国のリードに追い着くペースがゆっくりしていたとはいえ)、25世紀の終りには姿を消していた。今日ではインダストリアルメックの設計機のみに使われるものに格下げされているとはいえ、経済学者と軍技術者達の幾人かは、貿易の停止とブレイク教徒の強襲と占領による一流工場の喪失を引き合いに出しつつ、かような“レトロテック”の復活の可能性を(そしてそれが一時的なものに終る事を願いつつも)予言している――その安価に作られるバトルメックは、民生品水準のコンポーネントからジャイロ、コクピット、基本構造、兵器を備える事になるであろう、と。現在の危機に於いて、指揮官の幾人かは質よりも量に重きを置き始めており、この“レトロテック”はやがて自らの居場所を作り出せるかもしれないが、現在の所はスターコープ社の工場の様な場所でかような製造が行われているかどうかは依然として不明である。
 これらの噂にも拘らず、アレックスは(訊ねられた際には)自分のグラディエイターが新設計機ではなく、遙か昔に失われたメリーウェザー・インダストリーズ社によって2468年に最初に作られた“現代的”なGLD-3R型の内の1機でもない、と主張をしている。それどころか、ケラーは自分の乗機が本当にオリジナルのGLD-1R型――やがてGLD-3R型へと発展していく事になるプロトタイプ――であると言い張っているのであった。
 当然の事であるが、彼の主張の実証は困難である。ケラーの機体の兵装は3R型とほぼ全く類似性はないのであるが、オリジナルの“プリミティブ”1R型のスペックは5世紀に渡る戦争により失われたままなのである。また、その機体の装甲はアレックスの主張を裏付ける無言の証拠として十分な程に継ぎ接ぎだらけであるが、この機体には未回答の疑問が余りにも多く残されており、それ故にデヴィル旅団の神秘感を増す事にのみ寄与している。しかし、最大の疑問は、当然であるが、3025年期の強襲技術の頂点と言える機体をそのほぼ半分の重量しかなく時代遅れで元々のプリミティブ・スペックを明らかにするのが不可能な機体と取り替える指揮官が何故に存在したか、という事であろう。


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