イマーラ家――“政治的公正”
(HOUSE IMARRA: POLITICALLY CORRECT)


 イマーラ家が喫した屈辱的な敗北は、第4次継承権戦争に於ける最後の軍事行動の1つである。策略で彼等のメックに装備された不完全な特別強化マイアマー(3重強化筋肉)により、この武家は“シーアン”に来襲したダヴィオン軍に対して全く何も為せなかった。(ダヴィオン軍が撒いた)特製ガスに晒された彼等の装備した強化マイアマーは、突然、炎上し、戦場で無力に立ち尽くすメックのみを残す事となったのであった。
 続く30年間、イマーラ家連隊は“シーアン”での駐屯任務に従事させられた。しかし、政治的必然性は最終的に彼等を3057年に行われた“リャオ=マーリック攻勢”の戦闘へ関わらせる事となった――8武家全てがリャオの故地奪還の助けとなり、その後、生じた“ケイオス・マーチ(混沌の境界域)”への軽襲撃任務の為に彼等はその地へ留まった。そして、この“武家中で第1位の座に耐え得る武家”は最終的にその名誉を回復し、全ての武家からの敬意も取り戻したのであった。
 最上位の武家の座に相応しい存在であり、“シーアン”の最強の駐留部隊でもあるイマーラ家は、軍事学と同程度に政治学に精通している。この武家の中では、“サーナ勅令”は“ロリックス教義”よりも上位に立つ訓である――イマーラ家の誓約は、首相への忠誠よりも、カペラ大連邦国への忠誠を強調する傾向が強いのである。士官達はあらゆる状況に於いて、政治的重要性の分析に軍事的考察と同程度には熟達しているのであった。

 イマーラ家の紋章は、カペラ大連邦国の紋章を真鍮で複製したものである。正装用軍服はアイボリーをリャオ・グリーンで彩ったものである――この制服は通常のケープで包まれるが、儀式用の大刀はそのままにされる。また、この彩色と同様のものに金色のアクセントを更に加えたものが、メックの塗装に用いられている。

主要士官
 イオン・ラッシュ名誉大将はイマーラ家の家長であり、武家の“聖訓”の最高師範(筆頭指導者)でもある。彼はスン=ツー・リャオに副官として仕えており、首相にほぼ毎日伺候する3人の主要アドバイザーの中の1人である。幾つかの点を考えると、これは意外な事である……イオン・ラッシュには、キャンダス・リャオと過去に強い結びつきが存在したのである。幾人かは水面下で「3052年のキャンダスによるロマーノ・リャオ暗殺を、ラッシュが手助けした」と告発したが、これは“マスキロフカ”によって公式に否定された。流言や告発がされたにせよ、イオン・ラッシュが首相の完全なる信頼を受けている事は――特に、3062年に試みられた暗殺からスン=ツーを救ってから一層増しているのは、明らかな事実である。

戦術
 イマーラ家連隊は、戦場に於けるその優秀さを示す長い歴史を有しており、彼等は一度ならず、より劣る部隊を畏怖するのに用いられている。しかしながら、“リャオ=マーリック攻勢”の最終局面にてイマーラ家は惑星“スタイク”の襲撃をし、そこでエリート部隊の第3ドネガル防衛軍と戦闘を行う事となった。彼等を前にしても畏怖をするには程遠い存在である第3ドネガル防衛軍は、イマーラ家を打ち負かすべく圧倒的な数で以って攻撃を仕掛けてきたのである。イマーラ家は彼等のこの傲慢さを利用して第3ドネガル防衛軍を数km以上先に誘き寄せ、その後に逆襲を行った。そして、この戦術は第3ドネガル防衛軍の数個中隊に大損害を与え、1個大隊以上を潰走させたのである。しかし、最終決戦が行われる前に両連隊は撤退命令を受け、惑星“スタイク”を“ケイオス・マーチ”に残して去っていったのであった。

イマーラ家メック戦士団
部隊規模: 1個大隊 熟練度: 古参 忠誠度: 熱狂

家長: イオン・ラッシュ名誉大将
第1中隊: スー・ムール・カルド少佐
第2中隊: ハンス・ヴァン・リクトフ少佐
第3中隊: マリーハ・ナカーロ少佐

 第4次継承権戦争以後、重要な戦闘で見られる事は無かったにも拘わらず、部隊の練度を“古参”に維持し続けた事は、イマーラ家の訓練過程の証左と言えるものである。“リャオ=マーリック攻勢”での短期の侵攻は、部隊が最近に行った限定的な軍の任務である。また、イマーラ家は“トリプル・ストレングス・マイアマー(3重強化筋肉)”を装備したバトルメック“ティ・ツァン”を受け取った最初の部隊の1つである。そして、これにより、第4次継承権戦争の間に連隊の奥底へ鎮座した悪霊(3重強化筋肉へのトラウマ)を克服しつつあるのであった。
 イマーラ家家長のラッシュは独立指揮小隊を率いており、それによりイマーラ家のメック総数は40機となっている。戦場に於いては、指揮小隊はしばしば独立した小隊として行動する。――連隊の戦力を3個中隊と見積る敵軍は、エリート部隊である指揮小隊を容易に見落とす傾向があり、奇襲攻撃が可能なのである。

イマーラ家歩兵部隊
部隊規模: 1個大隊 熟練度: 古参 忠誠度: 熱狂

歩兵部隊指揮官: ポール・マツ=フルン中佐

 イオン・ラッシュと同様に、イマーラ家歩兵部隊の指揮官は強化マイアマーによる増強対象として選ばれた存在である。家長とは違い、マツ=フルンは弱体になる傷(深刻なトラウマ)を最初に被ってはいない。それ故に、少なくない数のイマーラ家歩兵部隊員が、自身の生来の能力を伸ばす為の方策として増強手術を選択している――これらの隊員の多くは、大隊の“ファ・シー”小隊に所属している。


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