マ=ツー・カイ家――“歴史家の挑戦”
(HOUSE MA-TSU KAI: THE HISTORIAN’S CHALLENGE)


 マ・カイはカペラの小貴族かつ学者で、“武家”の創設者の中で唯一の非軍人である。ある時、彼はマクシミリアン・リャオへ自身の個人的な請願を行った――その時、リャオ首相は当時の軍事戦略調整長官パーヴェル・リジック将軍とチェスをプレイしていた。そこにて、マ・カイは学者層の一員として素晴らしい論証を述べ、そして、彼は自身の領地の全てをリャオ家に差し出す事と、その代わりに自身の価値を証明する機会を得る為の新たな部隊の創設をして欲しいとの請願で締めくくったのである。――リャオ首相は請願を聞き入れると、彼の資質を見極める為に、リジック長官と“頓知のゲーム”を戦わせる試練をマ・カイへ課す事にした。そしてマクシミリアンは両者に対して、ゲーム・テーブルから彼等自身が最も価値が在ると思う駒を選ぶように言ったのであった。
 リジック長官は即座に、彼の手持ちの“クイーン”を掴み、それをリャオ首相に対して差し出した。「“クイーン”より強い駒は存在しません。究極の武器です。盤上を縦横に動き回り、その望む全てを奪う事ができます」
 一拍を置いて、マ・カイは答えた。「長官自身が認めました通りに、“クイーン”は武器に過ぎません。“キング”の手の中の道具です……もしくは、首相閣下の道具でしょう」
 マクシミリアンは、お世辞に対して微笑みはしなかった。「では、君は“キング”を選ぶのかね?」
 「いいえ」マ・カイは彼が選択した駒を手に持った。「私は“ポーン”を選びます。“ポーン”無しでは“キング”は何も為せません。そして最終的には、最も価値の低い駒であった“ポーン”は望む何にでも成れるのです。最も強い戦士にさえも……」
 リャオ首相は、微笑んだ。マ・カイは試練に打ち勝ったのである。
 マ=ツー・カイ家の閲兵用制服の色は、ライト・グリーンとアイボリーである。公式のメック塗装色は、リャオ・グリーンを基調としてアイボリーとゴールドで彩ったものである。この武家の部隊徽章は創設の由来を記念して、金の炎を背景に座す黒の“ポーン”となっている。

主要士官
 ジャスミン・リウ大佐(家長)――武家の中ではまた、リウ=ツー(リウ子)として知られている――は、戦略と戦術の大家である。彼女の行った戦闘は、カペラ大連邦国内の全ての主要な軍士官学校で教材とされているのである。彼女はタロン・ザーン戦略調整長官との長時間の討議をする為に“シーアン”から頻繁に招聘を受けている――この討議は時々、あまりにも抽象的なものになり過ぎて余人の大部分には理解し難いものとなってしまうのではあるが……。ザーンはリウよりも自分が戦略面に優れていると自認しているが、明らかにそれは誤りであると言えよう。しかし興味深い事に、ザーンは戦場では卓越した戦術家であり続けているのであった。

戦術
 マ・カイは彼の最初の弟子であるマ=ツー達を呼び出し、彼等と共に訓練を行い、哲学・政治科学・歴史学を教えるのと同様の態度で以って戦闘の仕方を学ばせた。そして、彼は戦場へ現れる前に敵を倒すべく、戦略を詳細に分析し、特殊部隊と情報収集ツールを駆使する専門家である事を立証したのである。反応の速い軍部隊ではないが、マ=ツー・カイ家は任務目標の達成に失敗する事が極めて稀な部隊なのである――時々、カペラ大連邦国は彼等の成果の保持に失敗してしまうのであるが。

マ=ツー・カイ家メック戦士団
部隊規模: 1個大隊 熟練度: 古参 忠誠度: 信頼

家長/第1中隊: ジャスミン・リウ大佐
第2中隊: ダニエル・ウィリアムズ少佐
第3中隊: ブランド・セント・クラウド少佐

 マ=ツー・カイ家武戦士団は、もし、明らかに現実味のない任務を下されたり、彼等が誤った使われ方をされていたりするのではないかと感じたのならば、命令に対して疑問を持つであろう。しかしながら、一度命令の正当性が証明されたのならば、彼等は最後まで命令を完全に遂行しようとするのである。マ=ツー・カイ家のバトルメック部隊が歩兵を伴わずに戦場に現れる事は稀であり、勝者の地位を確立する為にも通常部隊の同僚達に信頼を抱いているのである。また、この部隊は、高速の中・重量級メックの連合に重きを置いている。

マ=ツー・カイ家歩兵部隊
部隊規模: 1個大隊 熟練度: 一般 忠誠度: 信頼

歩兵部隊指揮官: アレクシー・ヴェンチェコフ中佐

 通常の遭遇戦に於いて、この歩兵部隊のVTOL偵察小隊は戦場で最適の位置に出現する。それから、指揮官は間接砲撃の観測班を送ると共に偵察部隊を前進させ、そして最後に素早く2個分隊のバトルスーツ歩兵部隊を配置につかせるべく装甲車輌が動き出す。――時間が与えられるのならば、この武家は敵の潜在能力全てを知る事が可能であり、彼等の特殊部隊は情報に於いて、“マスキロフカ”よりも信が置かれているのであった。


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