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ケル・ハウンド (Kell Hounds) |
指揮官: モーガン・ケル(3027〜3055退役)、ダニエル・アラード(3055〜3069戦死)、アキラ・ブラーヘ(3069〜)
部隊規模: 1個連隊(3030〜3040)、2個連隊(3040〜)
部隊練度: エリート
略歴:
第4次継承権戦争(〜3030年)
第4次継承権戦争中、ケル・ハウンドは各所で激戦を行った。3029年、5月、ケル・ハウンドは惑星“リヨン”にて第3ディーロン連隊を壊滅させ、同年10月には惑星“ヌサカン”にて第5光の剣連隊を壊滅させた。そして、惑星“ヌサカン”での最終戦闘にて、モーガン・ケルはヨリナガ・クリタに対してある勝利を収め、その長きに渡る因縁に決着を付けたのであった。
戦闘終結後、ヨリナガ・クリタの息子であるアキラ・ブラーヘはケル・ハウンドへの入隊を請願し、モーガン・ケルはその請願を受け入れた。その後、ケル・ハウンドは第3ディーロン連隊と第5光の剣連隊から回収した戦利品を抱えて本拠地の惑星“アークロイヤル”に帰還し、戦闘で被った損害からの再建に取り掛かった。また、この時に第4次継承権戦争中にケル・ハウンドに加わった傭兵部隊ブラッドリー・ブラボーズ(その指揮官のスコット・ブラッドリーは元・ケル・ハウンド隊員であり、モーガン・ケルの復帰によりケル・ハウンドへ再度戻ってきていた)は正式にケル・ハウンド組み込まれ、ケル・ハウンド第3大隊の中核となった。――かくして、ケル・ハウンドは1個連隊というかつての陣容を完全に取り戻したのであった。
第4次継承権戦争後(3030年〜3040年)
第4次継承権戦争後の数年間、ケル・ハウンドは部隊の再建にその時を費やした。3030年、モーガン・ケルはサロメ・ワードと結婚し、その2年後には2人の子供――フェラン・パトリック・ケルとケイトリン・ワード・ケル――を儲けた。当初、サロメが戦場で負った傷は子供を通常の過程で出産する事を不可能なものとしていたが、ウルフ竜機兵団から派遣された医療技術者の体外受精技術により彼女は子供を得る事ができたのであった。
3033年、ダニエル・アラード少佐とアキラ・ブラーヘに率いられた1個中隊は、マーリックとシュタイナー間の国境近くの辺境にてある作戦行動をした。この作戦は大分部が未だに秘密のベールに覆われていて不明である。確かな事実は、ダニエル・アラード少佐がメガン・ケルという名の女性を伴って辺境から帰還してきた事と、モーガン・ケルが彼女の事を自分の実子であると認めた事である(彼女が若き日に辺境を放浪していたモーガン・ケルと伝説の海賊レッド・コルセアとの間の子供であるとの噂が存在しているが、これが真実であるかどうかは定かでない) そして、その翌年、ハンス・ダヴィオンとその家族、その他の中心領域著名人達が出席した盛大な結婚式にて、ダニエル・アラードはメガンと結婚した。
第4次継承戦争後、ケル・ハウンドが参加した初の大規模軍事行動は3038年、自由世界同盟の惑星“クジャーリ”での駐留任務であった。ケル・ハウンドはこの任務に一族郎党を伴って赴いたが、予期せぬ危険を呼び込む事となった。カペラ大連邦国の支配者ロマーノ・リャオは自国の国境を圧迫するケル・ハウンドの駐留部隊に不快感を感じ、そして、ケル・ハウンドのメンバーの中に怨敵ジャスティン・アラード一の弟(ダニエル・アラード)がいる事を知り、“クジャーリ”に彼を殺害する為の暗殺者を送り込んだのである。しかし、この暗殺者は現地への潜入には成功したが目標の住居の位置を誤認し、アラードの住居ではなくモーガン・ケルの住居を襲撃してしまった。幸いにも、暗殺者はフェラン・ケルの愛犬“グリンナー”に噛み殺されたが(その後、“グリンナー”自身も暗殺者に負わされた傷により死亡し、この事件はフェラン・ケルの心に傷を残した)、この事件はケル・ハウンドが作戦中の際のその一族郎党の安全確保に関して課題を残す事となった。
3039年、ケル・ハウンドは自由世界同盟を離れ、連邦=共和国に向かった。連邦=共和国の統治者ハンス・ダヴィオンは近々実施予定のドラコ連合への侵攻に備え、“地球回廊”宙域の防衛を強化するべくケル・ハウンドを雇用したのである。しかし、それから勃発した“3039年戦争”でのドラコ連合軍の攻勢は予想を越えるものであり、ケル・ハウンドは恒星連邦ドラコ境界域の首都惑星“ロビンソン”の防衛を増強すべく急遽そこに配置される事となった。そして、3040年までケル・ハウンドは“ロビンソン”に駐留し続けたのであった。
3040年、カトリーナ・シュタイナーが死亡した事により、モーガン・ケルは彼女の莫大な遺産の一部を受け継いだ。モーガン・ケルはその遺産を部隊規模拡張に用いてケル・ハウンドを完全編成の2個連隊へと増強し、ダニエル・アラードとスコット・ブラッドリーの両名を中佐に昇進させてそれぞれの連隊の指揮を執らせた。また、アキラ・ブラーヘも少佐に昇進させ、第1連隊第1大隊の指揮を彼に任した。
新世代(3041年〜3049年)
3041年、ケル・ハウンドの将来は希望に満ちたものであった。モーガン・ケルの子供達――フェラン・ケルとケイトリン・ケル――は士官学校に入学し、将来のケル・ハウンドの中核を担うのが見込まれた。ダニエル・アラードとスコット・ブラッドリーも非常に有能な指揮官である事を証明してモーガン・ケルの実務面での負担は軽くなり、彼はケル・ハウンドの一族郎党用の訓練/教育プログラムの構築に専念できた。そして、モーガン・ケルは長年の夢の1つであったケル・ハウンドの恒久的な本拠地の建設にも取り掛かったのである。この本拠地は10年の歳月を費やして惑星“アークロイヤル”上の首都オールド・コンノート近傍に建設され、ケル一族所有のエール・バトルメック・カンパニー社(後にアークロイヤル・メックワークスに改称)と共にケル・ハウンドの重要な支援基盤となった。
3042年、モーガン・ケルは大いなる喜びを得る事となった――亡き弟の忘れ形見が彼の所を訪ねてきたのである。自身の事をクリスチャン・ケルと名乗った彼は、自分がパトリック・ケルとその謎めいた恋人であったタカラの息子であると語った。その時16歳であった彼は母親が死んだ後に初めて自分の父親の事について知り、自分の父親の事を聞くべくモーガン・ケルを訪ねてきたのであった。モーガン・ケルは、ドラコ連合のヤクザの中で育った彼が身に付けた卓越した護身技術とドラコ連合に関する深い知識に感銘を受けた。
モーガン・ケルは自分の亡き弟から受けた恩に報いるべく、クリスチャン・ケルを引き取る事にした。そして、クリスチャンにメック戦士としての教育を受けさせるべくモーガンは即座にケル・ハウンドの総指揮官の座から引退し、ダニエル・アラードをケル・ハウンド総指揮官に、アキラ・ブラーヘを第1連隊指揮官に任命し、惑星“アウトリーチ”へと旅立った。この惑星“アウトリーチ”でのウルフ竜機兵団の下での本格的な訓練は3年間続き、クリスチャン・ケルは恐るべき技量を持つメック戦士へと成長した。
クリスチャン・ケルの初陣は、後に“アンバーグリスト危機”と呼ばれる事になるセントアイヴズ協定領の惑星“アンバーグリスト”にて行われた。惑星“アンバーグリスト”に攻め込んだカペラ大連邦国軍の惑星首都への進撃を阻止するべくケル・ハウンドは戦闘を行った。戦闘の最中、戦死した中隊長の代りに中隊の指揮を執ったクリスチャンは見事な指揮をし、カペラのヒリツ家の大隊とカペラの他部隊が合流するのを阻止した。そして、この行動はケル・ハウンド第2大隊が惑星首都をカペラ大連邦国軍の攻撃から守るのを可能としたのであった。戦闘後、クリスチャン・ケルはその功績を称揚され少佐に昇進し、ケル・ハウンド第1大隊の指揮官に任命された。
一方、クリスチャンの華々しい戦績とは対照的に、モーガンの息子のフェラン・ケルは順調とは言えない道を歩んでいた。元来の反抗者である彼にとってライラの保守的な士官学校は馴染めるものではなく、授業態度も悪く、親友(かつ姉の様な存在であった)であったドーナ・J・コーナーの戦死後、それは悪化するばかりであった。そして、3048年、“ターカッド”で発生した災害時に於けるその独断専行を理由に、彼はナーゲルリンク士官学校から追い出されたのであった。退学後、フェラン・ケルはケル・ハウンドに入隊し、第2連隊の偵察小隊の一員として自由ラサルハグ共和国の辺境へ海賊討伐に向かった。自由ラサルハグ共和国内に駐屯している際、フェラン・ケルは現地の高官の娘で気圏戦闘機パイロットであるティラ・ミラボーグと恋仲になり、彼にとってこの長期派遣任務は全てが悪いものではなかった様である。
この時、中心領域の誰も、恐るべき軍勢が辺境に出現している事に気付いていなかった――辺境で増加している海賊の襲撃が氏族に由来するものである事に。
氏族侵攻(3050年〜3052年)
自由ラサルハグ共和国辺境にて、海賊を追跡していた1個大隊のケル・ハウンド派遣隊は謎の軍勢(後にウルフ氏族の部隊と判明した)と遭遇した。そして、その謎の軍勢と戦闘に入ったケル・ハウンドは大損害を受けて壊滅し、フェラン・ケルも戦闘の最中に行方不明となった。かくして、ケル・ハウンドは謎の軍勢――“氏族”と交戦した最初の中心領域の部隊の1つとなったのであった。
トワイクロス
氏族の侵攻が確認された後も、しばらくの間、ケル・ハウンドは待機し続けた。しかし、3050年、9月、彼等の出番はやってきた――連邦=共和国最高司令部はヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン少佐とカイ・アラード=リャオ中尉が提出した作戦案に基づき、氏族に対する反攻作戦実施を決定したのである。作戦目標とされたのは、その数か月前に激戦が行われて現在はジェイドファルコン氏族の占領下にある惑星“トワイクロス”。この惑星“トワイクロス”を奪還すべく編成された軍の中にケル・ハウンドの2個連隊も含まれていた。諜報報告によるとジェイドファルコンは惑星制圧後に一線級部隊を他戦線に移動させ、現在はニ線級部隊の1個連隊しか惑星に駐屯していないとされていた。これをケル・ハウンドの2個連隊、第9連邦=共和国RCT、第10ライラ防衛軍の計4個連隊で攻撃し、敵を陽動して誘き出した後に包囲殲滅して惑星を奪還するという作戦であった。この作戦の成功率は高いものと見込まれた。
しかし、連邦=共和国軍にとって不幸な事に、“トワイクロス”にはジェイドファルコン氏族の精鋭部隊であるファルコンガードが尚も留まっていたのであった。ファルコンガードにとっても予定外の事に、“トワイクロス”の予測不可能な砂嵐が彼等の降下船の離陸を妨げ、惑星外への移動を不可能にしていたのである。そして、砂嵐に隠された彼等の存在を連邦=共和国軍は気付く事なく、作戦は開始されてしまった。
“トワイクロス”に降下した連邦=共和国軍の作戦は順調に進むかに見えていた。“トワイクロス”の砂混じりの風は氏族メックが搭載している兵器の射程を大幅に減少させており、連邦=共和国軍は互角の態勢で戦闘を行えたのである。しかし、危機は突然に訪れた。連邦=共和国軍の後背地域に続く唯一の間道である“グレート・ガッシュ”に予想もしなかったジェイドファルコンの精鋭部隊ファルコンガードが出現し、そこを守っていた1個メック中隊と歩兵部隊が間道を爆破する前にそれを殲滅し、尚も進撃を続けたのである。作戦は崩壊し、ケル・ハウンドは逆に包囲殲滅される危機に陥った。
ここで、奇跡が起きた。カイ・アラード=リャオの英雄的な行動により、“グレート・ガッシュ”にてファルコンガードは生き埋めとなり壊滅したのである。そして、後背を気にする必要のなくなったケル・ハウンドと連邦=共和国軍は、ジェイドファルコンの惑星駐留部隊を当初の予定通り包囲殲滅したのであった。しかしそれでも、その過程でケル・ハウンドは相当な損害を受けており、再建にはしばしの時間が必要となっていた。次の大規模戦闘にケル・ハウンドが参加できるかどうかは微妙であった。
小康
ここで中心領域にとって幸いな事に、氏族の侵攻は突然全面的に停止した。ティラ・ミラボーグの特攻で氏族の大族長が死亡した事により、ブラッドネーム保持者の全てが次の大族長選出の為に氏族本国への帰還を余儀なくされた為である。この氏族の大族長の選出と侵攻再開には1年の歳月を要し、中心領域は貴重な時間を得る事となった。
この予期せぬ休戦期間中、ケル・ハウンドは部隊の再建をすると同時にウルフ竜機兵団から供与された氏族製の兵器を装備して1個連隊を氏族と同水準の装備にアップグレードした。また、先の戦闘で収集された情報を分析し、氏族戦術の長所と短所を見抜く事にも成功していた。ケル・ハウンドは戦訓を学び、より強力な存在となって次の戦闘に備えていた。
ルシエン
3051年、11月下旬、ケル・ハウンドはハンス・ダヴィオン国王より緊急メッセージを受け取った。そのメッセージは、ドラコ連合の首都惑星“ルシエン”の防衛戦に連邦=共和国側の援軍としてウルフ竜機兵団とケル・ハウンドが赴く事を求めるものであった。ハンス・ダヴィオンは“アウトリーチ”でのセオドア・クリタとの会談の際に氏族戦争中の恒星連邦とドラコ連合の相互不可侵を約束しており、“ルシエン”が危機に晒されていても恒星連邦の正規軍を援軍として派遣する事はその約束を破る事から不可能であった。故に、ハンス・ダヴィオンはタカシ・クリタの“傭兵殲滅令”の危険を知ってはいたものの、ウルフ竜機兵団とケル・ハウンドに頼らざるを得なかったのである。氏族の脅威を理解していたモーガン・ケルはドラコ連合との過去の怨讐を一時棚上げにし、この要請に応じる事を決定した。そして、モーガン・ケルは現役復帰し、自らケル・ハウンドの総指揮を執る事にしたのであった。
3052年、12月25日、ウルフ竜機兵団とケル・ハウンドは“ルシエン”に到着し、当初は侵攻軍と誤解されながらも無事に惑星に降り立ち、ルシエン防衛軍に加われた。懸念されていたタカシ・クリタの“傭兵殲滅令”はセオドア・クリタがタカシ・クリタを抑えられた為に実行はされず、ウルフ竜機兵団とケル・ハウンドは(前線に傭兵部隊を配置する事に対するタカシ・クリタの強硬な反対により)帝都防衛の為の予備部隊として防衛部隊への参加を許されたのである。
3052年、1月4日、スモークジャガー氏族とノバキャット氏族の侵攻部隊が“ルシエン”星系のジャンプポイントに出現した事により、“バトル・オブ・ルシエン”は開始された。氏族軍はセオドア・クリタが入念に計画し構築した防衛線に真正面から突入する事となり、現地の地形を駆使したアンブッシュや地雷原、遠隔操縦されたインダストリアルメックを使用した特攻作戦により甚大な損害を被った。しかし、進撃速度は低下したものの氏族軍の進撃は完全には止まらず、戦闘はやがて帝都前面――カドグチ・バレーでの打撃戦へと移っていった。この段階でケル・ハウンドとウルフ竜機兵団は戦闘に加入しており、ドラコ連合戦線に穿たれた穴を塞ぎつつ気圏戦闘機部隊の掃射/爆撃を組み合わせた遅滞戦闘を実施して氏族軍に出血を強要していた。このカドグチ・バレーでの戦闘は最終的にタカシ・クリタ自らが率いた親衛隊が氏族部隊の進撃を阻止している間に、ケル・ハウンドが氏族軍の側面と後方から襲いかかった事により大規模な包囲殲滅戦へと発展した。皮肉にもタカシ・クリタが金床となりケル・ハウンドが金鎚となったアンヴィル・アタックが完成したのである。この戦闘で驚くべき事にタカシ・クリタは数機のオムニメックを撃墜した。また、モーガン・ケルもその伝説的な技量(ファントム・メック)を遺憾なく発揮し、単機行動で自らを囮にして味方機への射撃を吸収して味方機の行動を支援するという戦法で大戦果を挙げた。
かくして、“バトル・オブ・ルシエン”はドラコ連合の勝利に終った。しかし、この勝利は高い代償を伴うものであった。戦闘開始前、ケル・ハウンドには200機を越えるメックが存在していたが、戦闘終了時にそれは70機にまで減少していたのである。同様に、ウルフ竜機兵団も戦力が半減する程の損害を受けており、熱狂的に戦ったドラコ連合軍もそれと同じ状況であったのである。これを見たセオドア・クリタは、ウルフ竜機兵団とケル・ハウンドの両者に放棄され戦場に散乱した氏族装備を最初に回収する権利を与えた――そして、これにより、ウルフ竜機兵団とケル・ハウンドは再建が可能となった。セオドア・クリタはそうする事で、自分の祖国を救う為に犠牲を払った傭兵部隊達にその感謝を示したのであった。
また、この“バトル・オブ・ルシエン”でのケル・ハウンドの奮闘は、ドラコ連合とケル・ハウンドの間に存在する長年の悪感情を払拭する効果をもたらした。ケル・ハウンド自身にはドラコ連合の為に戦ったという意識は低かったが、戦場で共に助け合って戦ったという経験は互いに対する尊敬の念を生み、過去の怨讐の幾らかが水に流されたのである。一般市民達も自分達の首都を救ったケル・ハウンドに様々な感謝を示した。例えば、“ルシエン”に居住する盆栽の名人達は“ルシエン”でドラコ連合を救うべく戦ったケル・ハウンド隊員達の為に盆栽を1つずつ作り上げた。そしてその後、“ルシエン”の戦闘に参加したケル・ハウンド隊員が死亡する度に、それは惑星“アークロイヤル”に送られ、ケル・ハウンドの基地内に設立された巨大な庭園に植えられたのであった。
停戦
“ルシエン”での戦闘後、ケル・ハウンドは惑星“アークロイヤル”に帰還し、その後の戦闘に備えるべく自らが負った損害の回復に集中した。しかし、この後に“氏族戦争”と呼ばれる事になる戦役にて彼等の出番が再び必要となる事はなかった。惑星“ツカイード”を舞台にした氏族とコムガードの拒絶の神判にコムガードが勝利し、氏族は15年間の停戦をせざるを得なかったのである。“ツカイード”にて氏族軍が大損害を受けていた事もあり、連邦=共和国の旧・ライラ領への危機は一先ず去ったのであった。
停戦後、ケル・ハウンドはフェラン・ケルが生存しており、その上、氏族の有力者となっている事を知り、怒り驚く事となった。自分達が敬愛する創設者の息子が今や敵となっているとの事実は、ケル・ハウンドの隊員達にとって非常に苦い現実であった。それでも、彼等はその現実と共に生き続けなければならず、以後も部隊の再建に彼等は邁進した。
レッド・コルセア(3053年〜3055年)
“バトル・オブ・ルシエン”以後の3年間、ケル・ハウンドは部隊の再建に時間を費やした。その期間中、部隊の一部は駐留任務に赴く事が時折あったが、連隊全体で契約を受ける事は全くなかった。その代りに、ケル・ハウンドはジマー・ズアーヴズの様な複数の小規模の傭兵部隊のスポンサーとなり、それらの部隊の支援をする事に集中して自分達が使用可能な戦力の拡大をした。ケル・ハウンドはそれらの部隊を野球で言うファーム・チーム(2軍チーム)とし、彼等を自分達の予備戦力として扱うと同時に人材の供給源としたのである。それらのファーム傭兵部隊にはそうなる事の見返りに、資金援助やケル・ハウンドの不要となった装備の供与が行われた。
3054年、2月、惑星“コーケンズ・プレジャーピット(コーケンのお楽しみの場所)”を奇妙な軍勢が襲撃した。自らを“レッド・コルセア”と名乗る赤いバトルマスターを駆る女性に率いられたその軍勢は、惑星に駐留していた第1ロビンソン特戦隊とコーケン市民軍に大損害を与え略奪をし、戦場に残された駐留部隊の生き残り達を捕虜に取った後に立ち去った。その後、レッド・コルセアは旧・ライラ領の辺境にて同様の襲撃を繰り返し行い、多数の世界を荒らして回った。辺境を防衛していた部隊は彼等を阻止する事はできず、氏族の侵攻に備えていた正規軍も含めて次々に撃破されていった。彼等は海賊を装っていたが、その装備は極めて良好で中心領域の水準からは懸け離れたものであったのである。その上、レッド・コルセアは氏族との関連を示す多数の証拠を残していた(しかも、彼等の出撃拠点はジェイドファルコン占領宙域に存在すると推定されていた)
この一連の襲撃の背後に氏族が存在しており彼等がツカイード休戦協定の遵守をしないのではないか、と疑った連邦=共和国は、氏族の大族長に抗議を行い、海賊討伐への協力を要請した。これに対して氏族の大族長ウルリック・ケレンスキーは海賊との関与を否定し、討伐部隊の編成と連邦=共和国への連絡役としての特使の派遣を行った。この時、特使として選ばれたのはフェラン・ワード(フェラン・ケル)であった。しかし、彼と予想外の再会をする事となったケル・ハウンド隊員達の多くは彼の事を中心領域を裏切った疑わしい人物と見なしており、ケル・ハウンドとフェランとの間は良好な雰囲気と言えるものではなかった。
3055年、4月、モーガン・ケルは3度目のそして最後となる現役からの引退を行った。モーガンはケル・ハウンドの指揮権をダニエル・アラードに譲り、過酷であった軍生活からその身を引いたのである。それから間もなくして、ケル・ハウンドは完全編成状態に戻り、完全な2個連隊としての定数を満たした――ケル・ハウンドの再建はここに完了したのである。そして、それを見届けたモーガンはメリッサ・シュタイナーの招待に応じ、妻のサロメ・ワードと共に惑星“ターカッド”へと向かった。
3055年、6月19日、中心領域を激震が襲った。この日、惑星“ターカッド”の新図書館の開館式に訪れていたメリッサ・シュタイナーがその場に仕掛けられていた爆弾により暗殺されたのである。その上、その場に居合わせたサロメ・ワードも死亡し、モーガン・ケルも重傷も負ったのであった。そして、それと同時期、惑星“デーイア”に駐留していたケル・ハウンドのファーム部隊であるジマー・ズアーヴズはレッド・コルセアと不利な戦闘をしていた所に頭上に降下してきたウルフ氏族の第31ゾラーマ星団隊との諍いの末に攻撃され壊滅した。ケル・ハウンドは一夜にして創設者が傷つけられ身内の部隊を壊滅させられるという大打撃を被ったのである。
連邦=共和国の新たな指導者となったヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは事態に激怒しつつケル・ハウンドに対してレッド・コルセア討伐を命じると共に、氏族大族長にウルフ氏族の第31ゾラーマ星団隊の連邦=共和国に対する戦争行為と取れるこの行動への釈明を求めた。しかし、氏族の大族長ウルリック・ケレンスキーにとってもこの第31ゾラーマ星団隊の暴走は予想外のものであり、非常に頭の痛い問題であった。氏族にとって海賊討伐はゾラーマ部隊の仕事であるが故に、エリートの正規部隊をそれに投入する事は氏族文化的に不可能であり、第31ゾラーマ星団隊に変わる部隊を送り込む事は困難であったのである。大族長は最終的に第31ゾラーマ星団隊へ連絡将校兼軍監としてフェラン・ワードと彼の親衛隊(1個三連星隊)を派遣する事を決定し、彼の指導力とケル・ハウンドとの繋がりが第31ゾラーマ星団隊の無分別な行動への掣肘となる事を期待した。
続く数ヵ月、(フェラン・ワードの監視の下)第31ゾラーマ星団隊とケル・ハウンドはレッド・コルセア討伐の任に就いた。この間に第31ゾラーマ星団隊とケル・ハウンドの連合部隊はレッド・コルセアに幾許かの損害を与えたが、殲滅には至らなかった。そこで最終的に、連合部隊は惑星“アークロイヤル”を手薄に見せかけてレッド・コルセアに襲わせた所で包囲して殲滅するという罠を仕掛ける事にした。
この罠はうまく機能し、惑星“アークロイヤル”に襲来したレッド・コルセアの大半を捕捉・撃滅する事に成功した。レッド・コルセアの装備は優れていたが、ケル・ハウンドは自分達のホームグラウンドでの戦いであるが故に地の利を得ていた事と重層的に構築された陣地を駆使した事により彼等を圧倒したのであった。そして、この過程でフェラン・ワードはその強力な指導力で以てケル・ハウンド隊員達の尊敬を勝ち取り、その行動で以て自分が未だにケル・ハウンドの一員である事を証明した。フェランは再び、ケル・ハウンドの一員であると見なされる様になったのである。
だが、惑星“アークロイヤル”の罠は成功したとは言え、レッド・コルセアの軍勢は少数が脱出に成功しており完全な殲滅には彼等の本拠地への追撃が必要であった(この時、第31ゾラーマ星団隊は任務完了によりウルフ氏族占領宙域への帰還の途についた) しかし、ここで幸運な事に、メック戦士ネルソン・ガイスト――惑星“コーケンズ・プレジャーピット”での戦闘でレッド・コルセアの捕虜となっていたが“アークロイヤル”での戦闘が行われる前に脱走に成功していた――が提供した情報によりレッド・コルセアの本拠地の場所が判明した。レッド・コルセアの本拠地の場所は、ウルフ氏族占領宙域内に存在する惑星“エリッサ”。惑星“エリッサ”は文明放棄主義者達が暮らす穏やかな気候の惑星であり、ウルフ氏族も自らの占領宙域内にありながら敢えて駐留部隊を置く必要を認めていない盲点と言える場所であった。
惑星“エリッサ”に急行したフェラン・ウルフの親衛隊とケル・ハウンドの連合軍は、現地に存在する筈がないウルフ氏族の軍勢――第31ゾラーマ星団隊と向かい合う事となった。第31ゾラーマ星団隊の指揮官スターカーネル:コナル・ワードは中心領域の傭兵部隊を引き連れてきたフェラン・ワードがウルフ氏族の権益を侵しにきたと非難し、惑星は第31ゾラーマ星団隊が全力で防衛すると挑戦を宣言したのである。第31ゾラーマ星団隊がレッド・コルセアと繋がっていた事はここに明白となった。しかも、コナル・ワードは厚顔にも戦闘入札での気圏戦闘機の戦闘への不参加を求めてきた。この明らかにレッド・コルセアを匿う第31ゾラーマ星団隊の茶番に激怒したフェランとケル・ハウンドは連合部隊全力での攻撃を宣言し、両者は惑星に降下して第31ゾラーマ星団隊とレッド・コルセア残存部隊との戦闘に入った。
この戦闘はケル・ハウンド側の優位で進んだ。ケル・ハウンドが“ルシエン”で回収した氏族装備で武装をしていた事と、第31ゾラーマ星団隊は氏族の部隊としては装備が貧弱かつ練度が劣っていたのがその理由である。ここで不利を悟ったコナル・ワードはフェラン・ワードに自軍の降服を餌に一騎打を挑み、彼を引きつけている間に、あらかじめ埋設していた核地雷で自軍とケル・ハウンドもろとも全ての証拠を吹き飛ばす事を試みた。しかし、ネルソン・ガイストが自分の身を犠牲にしつつ核地雷のスイッチを握っていたレッド・コルセアの指揮官を殺害した為に核地雷の起爆は為されず、コナル・ワードの試みは失敗に終ったのであった。
戦闘終結後、一連のレッド・コルセアの活動がウルフ氏族のクルセイダー派とジェイドファルコン氏族が結託した陰謀という証拠が僅かに出てきたが、決定的なものは見つからず、調査は暗礁に乗り上げた(レッド・コルセアの指揮官がネカネ・ヘイゼンという名のブラッドネーム保持者のジェイドファルコン戦士であるとの噂もあるが真実は定かではない)(また、コナル・ワードは戦闘後に“対等の環”の中でフェラン・ワードの手により射殺された) しかし、それでも休戦協定の破壊を目論んだ陰謀が一先ず阻止された事に変わりはなく、中心領域の平和は守られたのである。
3055年現在、レッド・コルセアと氏族との戦闘で再び損害を被ったのであるが、それでもケル・ハウンドは中心領域で最高の傭兵部隊との名声を保持し続けている。戦闘で得られた更なる氏族装備とファーム部隊の活用により、近い内に彼等の再建は完了すると見込まれている。また、フェラン・ワードを通してウルフ氏族との限定的な交易を彼等は開始しており、それはケル・ハウンドに更なる強みを与えるものであると見なされている。
編成:
ケル・ハウンドは部隊指揮小隊1個と2個連隊で編成されており、その各連隊は3個メック大隊(メック124機)と1個航空大隊(気圏戦闘機20機)、1個ジャンプ歩兵大隊(ジャンプ歩兵160人)で編成されている。
ケル・ハウンドは全ての部隊を輸送するのに十分な数の降下船と航宙艦を保有している。また、氏族装備の整備が可能な整備部隊、その他の部隊を完璧な状態に維持するに足る支援人員もケル・ハウンドは保有している。