キラー・ビー
(KILLER BEES)


 カル=ボーイング社のテストパイロットから偵察のスペシャリストに転じた者達の集団として3025年に創設されたこのキラー・ビーは、その技量とその高機動部隊のステルス技術により、長年に渡り多数の勝利を収めてきた。彼等の経歴には3020年代後半のライラ=ドラコ国境、3039年のドラコ連合アルシャイン軍管区への襲撃、ラサルハグ辺境での海賊狩りと言ったものが見掛けられ、そして、(氏族の到来後には)コムスターの探査局の為に働いた事もあるのであった。
 3067年、キラー・ビーはSLDF情報部との特別な雇用の下、ワード・オブ・ブレイクの“聖戦”が開始された時には、スモークジャガーを自称する辺境の無法者達を狩り出している途中であった。3068年にブレイク教徒達が惑星“ツカイード”を攻撃し、第1近衛バトルメック連隊を壊滅させたとのニュースがこの傭兵部隊に届いた時、キラー・ビーは自分達が拠点としていたその世界へ帰還するべく動いた。星間連盟は既に崩壊したのであるが、キラー・ビーは惑星“ツカイード”上に友人と家族達を残してきていた。そして、エルンスト・マードック少佐は、自分の部隊は誰一人として後に残していく事はしない、と断固として決意していたのである。
 探査局が作る事ができた最高の地図を武器に、マードックはインベーダー級航宙艦“クイーン・ビー”を“ツカイード”星系の秘密のパイレーツ・ポイントに進入させた。そして、キラー・ビーのレパード級降下船“ホーネッツ・ネスト”を繰り出した彼は、自分の部隊をデヴィルズ・バスとして知られている地獄の様な地域――過去の訓練演習の最中にキラー・ビーが徹底的に探索をした泥の穴と温泉が煮えたぎっている地域、へ移動させた。その地熱の発散は着陸したキラー・ビーの降下船を覆い隠しており、不注意な者はこの地域を踏破するのが非常に困難であるのに気付く事になるのである。
 ケリー・スプリングスの北東に着陸したマードックは、(自分達自身の家族に加えて)第21ケンタウリ槍機兵隊の一族郎党と負傷者達、ほぼ200人がデヴィルズ・バス付近の避難所に逃げ込んでいる事を発見して衝撃を受けた。彼は、彼等の全てを“ホーネッツ・ネスト”で脱出させるのが不可能である事を知っているだけでなく、離陸の際にブレイク教徒達がこの地域に群れとなって押し寄せてくるであろう事も理解していた。ここでキラー・ビーは自分達自身の一族郎党と槍機兵隊の負傷者達を降下船に乗せ、それと同時に彼等の高度にステルス化されている軽量級メック小隊は槍機兵隊の一族郎等達の残りの人々の移動を隠すべく陽動を行った。この作戦は完璧に機能し、ブレイク教徒達はケリー・スプリングスの花崗岩の尖塔群の周辺を電子上のゴーストを追跡して駆け回った。また、その間に、ジョン・スミス大尉に率いられたキラー・ビーの特別作戦チームは僻地へと消え去っていた。“ホーネッツ・ネスト”は捜索をやり過ごしてその2日後に発進し、辛うじてブレイク教徒の封鎖線を突破した。この作戦行動は犠牲の高いものであった――キラー・ビーの3機のメックと2機の気圏戦闘機が失われていた。
 この2ヶ月後、キラー・ビーは再び舞い戻った。槍機兵隊の生存者達からの情報で準備をしたマードックには、コムガード、第1近衛バトルメック連隊、第21ケンタウリ槍機兵隊の散り散りとなっている生き残り達が尚も惑星“ツカイード”に存在している事がわかっていた。彼等の救出活動への資金提供をするようコムスターを説得した彼の作戦計画は、前以て打ち合わせた合流地点にそれらの生き残り達を集める事に重点を置いたものであり、それに伴いスミス大尉――尚も惑星に留まっていた――がそれらの打ち合わせの大部分を行った。この作戦任務にはブレイク教徒の航空宇宙部隊を出し抜くべくマードッグが持つあらゆる手段が使われ、また同時にキラー・ビーの2隻目のレパード級降下船“ガル・ワスプ”は1基の精巧なセンサー欺瞞装置の助けの下に軌道上の戦闘艦を誤った位置へと引き離した。この攪乱は“ホーネッツ・ネスト”が危険な敵地着陸の実行に必要としていた隙をそれに与え、僅か10分後にはスミスのチームの生き残りと更に23人の難民を乗せつつ“ホーネッツ・ネスト”は再び離陸していた。
 キラー・ビーは、3068年8月にブレイク教徒の封鎖線を更にもう一度突破する事を目論んだが、ワード・オブ・ブレイクがこの傭兵部隊の手管に慣れつつある事は彼等に作戦実施の中止を強いた。そして、惑星“ツカイード”は今や危険に過ぎると見なしたが故に、コムスターはワード・オブ・ブレイクに打撃を与える為のキラー・ビー用の他の機会を探し求めた。ここ過去2年間に渡り、伝えられる所によればキラー・ビーは拡大していくブレイク保護領内にて複数の偵察任務を実行していたとされている。“ケース・ホワイト”で犯した過ちを2度と繰り返さない事を堅く決意している軍司教ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは、自らの疲弊しきったコムガードを何らかの将来の攻撃に関与させる前に、ワード・オブ・ブレイクのその新たな帝国の防御と弱点を確かめるという方針を選択したと思われるものである。

ドラグーン・レーティング:

キラー・ビー
 3年近くにも渡るほぼ休む事のないワード・オブ・ブレイクとの交戦後、キラー・ビーは自らの戦闘序列に空きつつある間隙を埋める時間を殆ど持てていない。その中でも最大の損害を受けているのは航空宇宙部隊である――それは作戦任務の度にブレイク教徒の迎撃を突破するという彼等の行動の矢面に立っていたのであった。
 ゴーストベアー氏族による惑星“ツカイード”の解放以降、マードックは第21ケンタウリ槍機兵隊で生き残っている最先任士官であるジェームズ・ルモンズと連絡を取り続けている。伝えられる所によれば、ルモンズ臨時大佐は、再建される槍機兵連隊内に於ける地位の提供をキラー・ビーに対して持ち掛けているとの話である。


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