夜行兵団――“不屈の意志”
(NIGHT STALKERS: ADAMANT WILL)


 マクギャビン大佐は年齢と傷によりDCMS(ドラコ連合軍)によって退役を強いられたのであるが、彼は国家を守るという自身の誓いを尚も果す事ができると感じていた。そして、彼の軍務記録に対する尊重から(そして、彼が失敗するであろうと見なした事から)、最高司令部はマクギャビンに新たな連隊の創設を許可したのである。初めに、マクギャビンはドラコ連合内の様々な通商企業の富裕なメンバー達を説得した。そして、3020年には、彼は2個連隊分の軽量級バトルメックを集めていた。彼の士官団は、未だに“竜”(ドラコ連合)へ奉仕をする事を願い続けている退役した戦士達で構成されており、また、彼は自身の兵達の大半を、演習場や名声の低いDCMS部隊への配属が定められている者達の中から勧誘した。3021年、その旗の下での数ヶ月間の訓練後、夜行兵団は“竜”への公式の軍務に就いた。
 DCMSの連隊の大部分は夜行兵団の事をその意思的な面に於いては賞賛に値するものであると見なしてはいたが、その編成に対しては滑稽さを感じていた。しかしながら、第3次継承権戦争の最中に、夜行兵団は非常に効果的な一撃離脱戦術を使用してライラ共和国の作戦の幾つかを失敗させた。そして、夜行兵団の熟練したリーダーシップがその他の若い連隊には不可能であった目標の奪取を可能とした際に、この連隊は更なる尊敬を勝ち取ったのであった。
 しかし、不幸な事に、他の指揮官達が夜行兵団の能力を浪費するのを阻止する為のマクギャビン大佐の断固たる努力は、最終的にこの部隊の運命を破滅へと追いやった。彼は2度に渡って、戦闘計画が最大限好意的に考えたとしてもその戦略を実行する為に自分の“疲れ果てた”戦士達を犠牲にする事になるものである、と自分が感じた際には、命令に服従しなかった。故に、DCMSに古参の2個連隊をもたらしたその功績と、戦闘に於けるその功績にも拘らず、マクギャビンはタカシ・クリタに嫌われた――そして、タカシ・クリタは、その2個連隊を異なる別々の管区へ派遣するよう命じた。また、タカシ・クリタ大統領はその嫌悪を更に示すものとして、第4次継承権戦争の最中に第1夜行兵団に戦闘に突入する事を命じ、彼等をライラの攻撃をそらす為の陽動として使用したのであった。そして、重バトルメックの1個増強連隊と向かい合う事となった第1夜行兵団は、最後の1人まで戦ったのである。この部隊の(最後の)抵抗は、マクギャビン大佐に“黒赤竜紋旗”をもたらし、彼が“玉砕サムライ”の列に加わるのを認めさせた。
 夜行兵団は盲目的かつ無条件にクリタ家に服従する事を拒否している為に、DCMSによって信頼できない部隊として記載され続けている。また、夜行兵団は部隊の各連隊にその現在の指揮官の名前を冠する事によって、その反抗的という名声を増大させている。しかし、この部隊のかような名声にも拘らず、セオドア・クリタは新たな夜行兵団の連隊の編成を許可する事によって部隊の経験を礼遇しているのである――セオドア・クリタ大統領は夜行兵団の哲学が、見込みのない可能性に対して優秀な戦士達を無駄に費やすよりも生き抜いて再び戦う事の方が尊敬すべきものである、という彼自身の信念を反映したものであると信じていると思われる。

指揮
 夜行兵団は、公式に退役した戦士にのみ大尉以上の階級を保持する事を認めている。そして、それらの階級に値する若い戦士達はDCMSの他の部隊に異動させられる事になるが、彼等が定年に達し復帰を望んだ際には喜んで迎えられる事になる。
 夜行兵団に加入する退役した戦士達の大部分は、自発的な降格を受け入れる。部隊は“竜”へ身を捧げて戦いを継続する事を願う多数の退役者達に提供する為の十分な士官のポストを持ってはいないのである――結果、夜行兵団の40%は、“中尉”の名誉階級を持った退役者達となっている。

部隊
 夜行兵団は、軽量級メックを好んでいる。その一撃離脱攻撃の機動は、その様なマシンを使用する事でより容易に実行できるのである。また、アップグレードされた装備の割合が低い事は、メックを近接戦闘に一般的に用いるのを減じているのを意味している。
 夜行兵団はその40年の歴史の最中に、かなりの気圏戦闘機、装甲、歩兵資産を獲得している。これらの資産の半分近くは、3058年の第3夜行兵団の編成の際にその連隊に直接移転されている。

塗装と徽章
 夜行兵団は、黒、灰、ダークブルーを好んでいる。この部隊のひだ飾りの付いたシャツと暗色の旅行外套で構成されている正装用軍服は、昔の“地球”の服装様式を反映したものである。夜行兵団の各連隊は、独自の徽章を掲げている。




第2夜行兵団――“トヨマ連隊”

 第3次継承権戦争の際のマクギャビン大佐の不服従に対する懲罰として、タカシ・クリタは第2夜行兵団に惑星“マタモラス”――如何なる形態の戦闘もあり得ないであろう場所、へ行く事を命じた。そして、何年もが経過する内に部隊の最古参の戦士達が死亡していった事により、第2夜行兵団は自らを有力な襲撃部隊にしていたその強みを失っていった。襲撃機動に必要とされる技能は、シミュレイターのみで効果的な育成/維持をする事は不可能であった。しかし、当時の司令官であったヘンダーソン大佐はこの問題に対する優雅な解決法を見つけ出した――彼は単純に部隊の専門技術を代替となる戦法に集中させたのである。夜間という条件の下での正確な機動と照準は平和な作戦宙域でも容易に訓練するのが可能な技能である故に、ヘンダーソンは第2夜行兵団の新たな専門として夜間任務を選択したのであった。
 未だに惑星“マタモラス”に駐留しているのであるが、しかし、今やこの惑星は前進したスモークジャガーの戦線の近くにあり、第2夜行兵団は再び戦闘をするのを望めるようになっている。トヨマ大佐は第2夜行兵団の訓練スケジュールを強化しており、また、DCMSの代表者達は最近になりこの連隊の戦闘準備態勢の評価を行っている。
 部隊は、戦士達にそのメックをこの連隊と伝統的に結び付いている暗色を使用して個人の好みに従って塗装する事を奨励している。この部隊の徽章は、暗色の外套を纏った1体の骸骨である。

主要士官
 士官達の多くは、その地位が指し示すものよりも高い階級を有している。これらの名誉的な階級はその戦士の過去の功労と認識されており、非公式な状況でのみ使われるものである。これらの士官達はその地位用の階級章を身に着けているのみならず、その名誉階級を明らかにする記章もまた身に付けている。
 第2大隊のイシダ大佐は、連隊の好奇心と夜行兵団の全戦士達のインスピレーションの対象となっている。79歳の彼は、頑健な肉体、鋭利な精神と反射能力を保持している。彼は第1中隊をエリートの水準にまで鍛え上げており、自身のジェンナーを自分自身がメックの一部であるかの様に操縦する事が可能である。

戦術
 第2夜行兵団は薄暮と夜間の状況用に訓練されており、その状況にて彼等は闇の覆いの下に猛攻を加えた後に消え去るという戦術を使用する事が可能である。そして、それは、第2夜行兵団が戦場へ実際に配備しているものよりも巨大な軍勢であると敵に信じ込ませる事を可能としている。

第2夜行兵団
部隊規模: 1個メック連隊 熟練度: 古参 忠誠度: 疑問

指揮官/第1大隊: ジェリコ・トヨマ大佐
副指揮官: ケリー・パーマーソン大佐
第2大隊: アリトモ・イシダ大佐
第3大隊: フランクリン・ベネット中佐

 第2夜行兵団の30%は、退役した戦士達である。第2夜行兵団は若い戦士達を募集する際、素早く良好に学ぶ事ができる将来性を持っている未発見の新兵を見つけ出す為にその技巧を自由に用いる。また、注意深い新兵補充方法の適用は、第2夜行兵団に古参の水準の熟練度の保持を可能とさせている。
 第2夜行兵団はアップグレードされた技術製品を非常に少量しか受け取っていない事により、その補給要求に新兵補充要求と同じくらいの注意を払っている。第2夜行兵団は主としてエンドースチールやフェロファイバー装甲等の構造資材に興味を持っており、また、小口径パルスレーザーやストリーク・ミサイル・システムの様な軽量級メックに利用できる兵器にも注目している。

第2夜行兵団航空宇宙大隊
部隊規模: 2個航空中隊 熟練度: 一般 忠誠度: 疑問

航空部隊指揮官: コシラ・カゴシマ大尉

 気圏戦闘機パイロットの生存率がバトルメック・パイロットの生存率より非常に低いものである事により、第2夜行兵団の航空宇宙中隊群の戦士達は夜行兵団連隊のメンバー達よりも一般的に若く、この状況は気圏戦闘機部隊を全般的により低い経験状態へとしている。この部隊は主として未改修の戦闘機を配備しており、この事は気圏戦闘機パイロット達へ敵軍に対する劣等感を与えている。

ストーム・クラウズ
部隊規模: 2個装甲大隊 熟練度: 古参 忠誠度: 疑問

装甲部隊指揮官: アレクサンドレ・ベスコフ中佐

 ストーム・クラウズは、惑星“マタモラス”に配属される前は辺境にて無法者達との戦闘を経験していた。この装甲部隊が夜行兵団と数年間を共に働いた後、当時の司令官であったヘンダーソン大佐は公式にこの装甲部隊を自分の部隊に付属させる事を要求したのであった。ストーム・クラウズは公式には軽量級と中量級装甲部隊の完全な1個連隊を集めているのであるが、3058年にその部隊の1個大隊の軽装甲部隊を第3夜行兵団に移転させている。

第14マタモラス自動車化歩兵連隊
部隊規模: 1個歩兵連隊 熟練度: 一般 忠誠度: 信頼

歩兵部隊指揮官: ブレント・トッチリ大佐

 

 


第3夜行兵団――“マッティラ連隊”

 3058年、良好に進行中のセオドア・クリタの“フェニックス・プログラム”は成功を収めてはいたが、尚も大統領の目標には届いていなかった。ここで、ペシュト軍管区の最高司令官であったアショーラ太守は強壮な戦士達を生み出す為の更なる代替物として、新たな夜行兵団の連隊の捻出を冗談として提案した。しかし、大統領はこの提案を真に受け、第3夜行兵団連隊の編成を認可したのである。これの発表には、新兵補充の強化や特別な手当てが全く付随はしなかった。退役した戦士達は、単に「“竜”に仕え、栄光を見つけ出す為の新たな機会」を紹介されただけであった。そして、部隊に加入した志願者達の多くは、単純に名誉の死を求めただけであった。しかしながら、第2夜行兵団から第3夜行兵団に派遣された献身的な士官達によって感化された事により、これらの退役者達は新たな生を見出したのである。彼等は自分達の戦闘力を取り戻す為に懸命に努力をし、今や死よりも戦闘の方を待ち望んでいる。
 第2夜行兵団と第3夜行兵団は同じ士官団を共有している事により、彼等は両方共に忠誠度が“疑問”であると分類されている。
 中心領域の現在の軍事情勢と氏族の存在が恒久的なものであると思われる事は、DCMSの定年年齢を志願者達に対しては適用を見合わせるべきかどうかで激しい議論を発生させ続けている。第3夜行兵団のパフォーマンスが、どちらの主張に分があるかの決め手になるであろう。
 第3夜行兵団は、この連隊の伝統的な暗色と正装用軍服を使用している。この部隊の徽章は、1つの満月を背景とした1つの墓石である。

戦術
 第3夜行兵団はまだ戦術的専門分野を開発中であるが、この連隊の軽量級バトルメック編成は実用上、この部隊が他の夜行兵団の部隊に歴史的に好まれていた一撃離脱戦術に熟達するであろう事を保証している。マッティラ大佐は革新的な戦術の才能を特には見せていないが、彼は自分が率いる兵達の力を識別してそれを使用するという偉大な才能を持っている。

第3夜行兵団
部隊規模: 1個メック連隊 熟練度: 一般 忠誠度: 疑問

指揮官/第1大隊: クリフォード・マッティラ大佐
副指揮官/第2大隊: アマンダ・イシカワ大佐
第3大隊: モリ・キドー中佐

 第3夜行兵団の50%を僅かに越える程が、以前に退役した達で構成されている。部隊の若い戦士達は全員が新兵で、それはこの連隊の総合的な熟練度を“一般”へと低下させている。イシカワ大佐は、若いメック戦士各自を1人の“指導者”――そのメック戦士の訓練に対して最終的な責任を負う――と組ませている。この強制的な指導を望まない若き戦士は、少なくともその指導者を模擬メック戦闘で3回の内の2回を打ち負かす必要がある。

第11ミッドウェー・ファントムズ
部隊規模: 1個航空中隊 熟練度: 一般 忠誠度: 疑問

航空部隊指揮官: キンモチ・オキノラ中尉

 “置換局”は、第11ミッドウェー・ファントムズ気圏戦闘機隊を、第3夜行兵団の必要性を真面目に考慮したというよりも大統領への誠意としてこの連隊に配属している。ミッドウェー・ファントムズの大部分は、オキノラがその全盛期を過ぎ去っており、自分達の任地に激しく憤慨している、と確信している。その結果として、第3夜行兵団は自分達の気圏戦闘機分遣隊の献身さと能力に対して殆ど信を置いていないのであった。

ダーク・ムーン
部隊規模: 2個装甲大隊 熟練度: 古参 忠誠度: 疑問

装甲部隊指揮官: チャールズ・ブリンケルホフ中佐

 ダーク・ムーン部隊は、第2夜行兵団から贈与された1個軽装甲大隊と壊滅した第3夜行兵団のローリング・サンダー連隊の1個重装甲大隊で構成されている。ブリンケルホフ中佐は2部隊間の良好な関係を促進する為に両装甲大隊をランダムに混合させている。そして、この方針は完全に信頼の置ける良く統制の取れた部隊を作り出しているのである。

第5エスパケー自動車化歩兵連隊
部隊規模: 1個歩兵連隊 熟練度: 一般 忠誠度: 信頼

歩兵部隊指揮官: シー・カイ=シェク中佐

 恐らく偶然にであるが、“置換局”は夜行兵団に熱意を持って務める歩兵部隊を第3夜行兵団に配属する事を為し遂げた。第5エスパケー自動車化歩兵連隊は、氏族やその他の“竜”の敵に対して幾つかの行動を起せる場所に就く事を気に入っているのである。また、ボーナスとして、第5エスパケー自動車化歩兵連隊の編成には、メックバスター戦闘機1個小隊を含む通常航空機の完全編成1個航空大隊が含まれている。


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