パンドラズ・ボックス
(PANDORA'S BOX)


 3057年のリャオ=マーリック侵攻と“ケイオス・マーチ”の成立後、望むと望まざるとに関係なく数ダースの世界が自分達自身で何を為すのも自由な状態になった。そして、軍部隊がこれらの世界群を放棄していったが故に、彼等の内の幾らかは途方に暮れる事となったのであった。
 惑星“ガン・シン”こそが、それらの混沌の初期の月々の最中、謎めいた傭兵指揮官パンドラ・ブラックが第3ドネガル防衛軍と“タオタオ・カオガン・ラウフー”――ストーキング・タイガーズとして知られていた小規模のカペラの不正規部隊の生き残り達を1つに纏めた地である。彼等を単一の臨編部隊に編成したブラックは、それを率いて自らを急速に分裂させつつあるその惑星から脱出する為の戦闘に突入した。やがて、このパンドラの新たな部隊は、壊滅した第1連邦=共和国RCTから少数の落伍者達を拾い上げ、同様に壊滅したダークナイト――この部隊の隊員達は戦闘が勃発する僅か数ヶ月前に惑星“アウトリーチ”にてそれを創設したがMRBCのオフィスに自らの部隊章を登録するまでの期間を生き残れなかった――から幾らかの傭兵達を拾い上げていった。
 惑星“ガン・シン”で彼等が直面した試練は3058年に終了した――この時、ケリー・ヴァンルー中尉(第3ドネガル防衛軍第7中隊)とブライアント・タン中尉(ストーキング・タイガーズ)はブラックによる仲介で以てスタイク共和区を作り上げるという協定に合意したのである。それに伴い、パンドラズ・ボックスは最初に、その大部分の支払いが惑星“スタイク”のタオ・メックワークスの部品と数機の改装バトルメックである、かなり有利な12ヶ月間の駐留契約を勝ち取り、部隊は中隊規模に強化された。
 自分達の生命(それと機体)を救うのに助け合った事は、この軍事的な孤児達の寄せ集めである集団の間にある程度の信頼を醸成するのに大いに寄与したと思われる。パンドラズ・ボックスはその駐留契約を更に2年間延長し、やがては仕事を求めて惑星“アウトリーチ”に行き着き、2個増強中隊を配備するのに十分な数の古参戦士を勧誘した。
 惑星“アウトリーチ”にて、才能のある者を引き抜く事と、補給物資に対する最高の交渉方法を見つけ出す事と、ハイレベルの社会的会合の席にて何回も目撃された事により、ブラック少佐は確固とした名声を獲得した。それにも拘らず、彼女は人との交際は好んでおらず非常に少数のインタビューにしか応じず、自分の部下達を動かして部隊の日常業務を処理する事の方を好んでいる。自分の経歴に関する噂をさせるがままに放置しているブラックは、彼女が連邦=共和国メック戦士養成校のトップ卒業者であるという噂や彼女の一族が没落した貴族の家系であるとの噂に対して肯定も否定もしていない。トレイハン・リャオからソラリス・チャンピオンのケリー・メッツにまで渡る人物の内の何れか(もしくはその全員)との激しい関係についての低俗な噂話は、パンドラズ・ボックスの戦士達から愉快な笑い声を引き出すに過ぎないものである。
 その公式の発足以来、パンドラズ・ボックスは火消し部隊か短期で危険度の高い場所の駐留部隊として雇われ続けている。連邦=共和国内戦の最中は、この部隊は貴族か国有化や徴発に対する特別な防備を欲した大企業に雇用されて主に過ごした。一方、“聖戦”の初期の彼等の契約は非常に目立たないものであり、MRBCは彼等が雇用されたままでいたのかそれとも単にあり得るかも知れないブレイク教徒の報復から隠れていただけなのか確認できないでいる。パンドラズ・ボックスの低いドラグーン・レーティングは、MRBCの公式の認可を受ける前にその最初の仕事を完了してしまったという事実と、帳簿外で多数の仕事を受けているその傾向に起因するものである。

ドラグーン・レーティング: C−

パンドラズ・ボックス
 パンドラズ・ボックスは、3個増強中隊――バトルメック2個中隊と車輌と装甲歩兵の混成1個中隊――で構成されている。第1中隊、“ジ・アヴェンジング・セヴンス”は中量級と重量級の機体を好んでおり、ローランド・ミルズ大尉とケリー・ヴァンルー中尉によって指揮されている。この中隊はその機体群への青色と灰色の塗装――その戦士達の第3ドネガル防衛軍の古き塗装様式と同様のもの――を継続しており、同様に第3ドネガル防衛軍の古い徽章――均衡が保たれている天秤のセット――を身に着けている。
 第2中隊、“ストーキング・タイガーズ”は、生皮の様に肩の上から垂れ下がっている襞状に塗装されたオレンジ色と黒色のベンガル虎の模様と、錆色の塗装様式を用いている。ブライアント・タン中尉によって指揮されている彼等は、軽量級から強襲型に渡るあらゆる等級の機体を保有しており、カペラの設計機をほぼ独占的に愛用している。また、タンは惑星“スタイク”での過去の契約の獲得物であるくたびれたオムニメック、メン・シェンを再生中である。
 パンドラズ・ボックスは戦場での乱戦に非常に熟達しており、その彼等の戦術はかつてウルフ竜機兵団司令官ジェイム・ウルフによって“狙った混沌”だと評された事がある。惑星“ガン・シン”に於ける過去のその不安定な編成から生まれたそれらの戦術は、パンドラズ・ボックスが主導権を取れる時に最高の効果を発揮するものであり、部隊が強い圧迫を受けた場合は若干の不利を作り出すものでもある。


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