スキビンスキー・サルベージ
(SKIBINSKI'S SALVAGE)


 戦闘工事、砲火の下での修理、戦場回収といった任務に特化している少数の傭兵部隊の中で最も高名であったのは、恐らく、伝説的な(そして現在は消滅している)バトルマジックであろう。技術支援傭兵部隊の原型的な理想であると称えられたバトルマジックは、廃品活用に関する天性の才能とベイリング・ワイヤーやダクトテープでメックを再建する能力を持った頑強で機知に富んでいる戦士達の集合体であった。
 しかし、スキビンスキー・サルベージは、バトルマジックと全く似てはいない。
 “ヘスペラス”出身の元・レストラン経営者であるエドワード・スキビンスキーは軍事的教育を全く受けておらず、彼の指揮下の何れの者もそれと同様である。実際、彼の部隊の降下船に内蔵されている兵器を除き、スキビンスキー・サルベージはただ一挺の拳銃さえも配備していないのである。スキビンスキーは、1つの仕事をする為に自分の部下達がそこに存在し1つの仕事――壊れたものを何であろうとも修理する――しか存在しない、というのを全員の心の中に徹底する事を望んだのである。
 バトルメックの動きに常に魅了されていたスキビンスキーは相続した家業のレストラン・チェーンが自分の直接の関与が無くとも利益を生み出せる様になるや否や、デファイアンス・インダストリーズ社での職を求めた。彼は如何なる技術的な経歴も持っていなかったが、彼の管理手腕と統率手腕は優れた者である事が証明され、彼は中途採用契約の下で雇用されて“フロート・チーム”リーダーになり、その傍らで技術教育を修了するべくそれを継続した。
 フロート・チームとは特定の部門に採用されるのを待っている(もしくは特定の部門に決して採用される事のない)技術者達で構成されているものであり、問題やスケジュール上の危機を処理するのに必要とされるが故に、デファイアンス・インダストリーズ社によりしばしば指名をされるものである。これの典型的なチームは、ある日にはセンサー・アレイの調整をし、次の日には装甲板を手で取り付けている自分達を見出す事になる。従って、スキビンスキーの最初の割り当てられた仕事は、彼の様な技能と興味を持った人物にとって普通ではないものとなった。実践的な技術者達は経営/管理について自分達を本当の仕事から遠ざける退屈な仕事であると見なしており、一方、経歴主義の管理者達はフロート・プールにいる行き場がなく溜まっている者を完全に無視していたのであった。
 当初から不足する事のなかったスキビンスキーの熱狂的な指導力は、行き場のない者達の集団であった彼のグループをデファイアンス社の主工場敷地内に於ける最高に需要の多いトラブルシューティング・チームの1つへとした。彼は程無くして幾つかのチームでも人気を博し、そして、彼の流儀と指導力はその全てのチームに同様の効果をもたらし、更には確固とした部門での地位に就いている技術者や専門技師までフロート・プールへの異動を希望し始めさえもした。
 しかしながら、独立チームのリーダーと彼の背広組の上司達との間での個人的な衝突がやがて形成されていった。また、それと同時にスキビンスキーは多数の才能のある技術者と専門技師達がデファイアンス社の低い階層内に配置され、そこにて1つの巨大な機械の単なる歯車になって腐っている事に気付いた。そして、レストラン・チェーンを含む自分の資産を現金化し、自分についてくる事を厭わない技術者と専門技師達を合同したスキビンスキーは、スキビンスキー・サルベージを創設したのであった。
 惑星“アークロイヤル”に移動したスキビンスキー・サルベージは、その正当な素晴らしいメック修理により即座に名声を築き上げた。汚い手段は決して使わず、仕事をするのみで、それを可能としたのである。スキビンスキーが組み込んだ部品の全ては精密に作られたものであり、オリジナルのものを凌駕するスペックであった。戦場の状況がそのシャシーに取り付ける事が本来想定されていなかったシステムを取り付けるのを必要とした際には、スキビンスキー・サルベージは融通が利きかつ効果的であるアダプターを製作した。
 また、スキビンスキーのデファイアンス・インダストリーズ社との密接な繋がりは、この企業の研究開発部門にバトルメックのパフォーマンスと革新に関する途切れる事のないデータを供給する事となった。デファイアンス社はスキビンスキーのチームによって設計された野戦改良キットや野戦改修キットのマーケティングまで開始し、一方、スキビンスキーはその企業の教育プログラムに常時目を光らせ、時折、そのトップの修了者の幾人かを勧誘した。不幸な事に、ワード・オブ・ブレイクが惑星“ヘスペラスII”と惑星“ターカッド”を占領して、かの企業の重要な本拠が存在する地を事実上支配した事により、この関係は中断させられている。
 何年にも渡り彼等の名声が増大したある時点で、幾つかの現地の傭兵部隊――トゥース・オブ・イミル等々の傭兵部隊――は自分達の契約交渉の際に指名する技術支援部隊としてスキビンスキー・サルベージを要求する事を開始した。3068年1月、トゥース・オブ・イミルがワード・オブ・ブレイクに通じていると誤って信じ込んでしまったコムガードの第2師団は惑星“エプシロン・インディ”にてこの傭兵部隊を危うく壊滅させかけた。事後に自分達の誤りを悟ったコムガードは、後にトゥース・オブ・イミルが惑星“アークロイヤル”に到着した時に疲弊した彼等の再建をさせる為にスキビンスキー・サルベージと契約した。この時以来、スーザン・ブラウネル・シャドウェル大佐とトゥース・オブ・イミルは、スキビンスキー・サルベージの熱心な信奉者――そして即席の移動販売員――へとなっている。
 スキビンスキーは、敵の砲火やより良い仕事の持ち掛けのどちらでも自分は部下を1人たりとも失った事はなくこれからもそうである、と常に素早く指摘をするものである。スキビンスキー・サルベージが修理した機体上の機器の故障の所為で失われたメック戦士が今まで1人も存在していないのは、彼の指揮下の全ての男女にとって大いなる誇りの源である。

ドラグーン・レーティング:

スキビンスキー・サルベージ
 戦場修理が戦場へ到達する為の能力を必要とするが故に、スキビンスキー・サルベージは“フォー・リング”――彼等が所有しているオーバーロード級降下船――を購入しており、当然ながらそれに徹底的な改修を加えている。そのメック隔室の半分以上は、機械工場と貯蔵庫へ置き換えられている。そして、これに2機のスティングレイ気圏戦闘機と4機のルシファー気圏戦闘機が護衛を提供している。現在、惑星“アトコンゴ”に駐留しているスキビンスキー・サルベージは、現在の戦闘期間中のLAAFからのサポート契約を引き受けている。


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