サマー・ストーム
(SUMMER'S STORM)


 3056年、ミゲル・ホセ・ヴァルディーズは、惑星“セントアイヴズ”のムジカ・エアロスペース・テクノロジー社のテストパイロットと地上要員達の為に労働組合化運動の先頭に立った。3059年に現地の工場が閉鎖されて過度の削減と再配置が為された時、ヴァルディーズは解雇手当を出すという提案を受ける事を決断した。彼にとって非常に驚きであったのは、その他にも20人のパイロットと42人の技術者にも同じものが行われていた事であった。そして、現地の酒場(“サマー・ストーム・ブリューハウス”)にて自分達の職を失った悲哀を紛らわしたヴァルディーズは、アイディア――カペラ大連邦国外の様々な航空宇宙企業にテストパイロット組織として雇用される傭兵部隊を創設するというものを、思い付いたのである。ここで失業中の他の者達も彼に賛同し、1ヶ月を経ずしてサマー・ストーム・エクスペリメンタル・グループ(SSEG)は創設された。自分達のリソースを共同で出し合い、SSEGは競売に掛けられたムジカ社の6機のTR-10トランジット戦闘機を購入し、その後間もなくして彼等は恒星連邦領域のボーイング社によって雇用された。
 SSEGはボーイング社の為に新型機体のテストをして、当面は生き延びた。しかし、緩やかにであるが、この部隊のメンバー達は企業の過度に慎重なアプローチに退屈し、他の職へと立ち去り始めた。ヴァルディーズ自身も、当初は非常に有望に見え刺激に満ちていた生活であったが、今では単調で骨が折れかつ官僚的な生活へとなってしまったものからの早期の引退を思案した。そして、この事柄を自分の中核グループの中の数名――ともかくも依然としてこの企業に残留していた者達――と話し合った後、彼等は自分達がムジカ社にてCCAFの常時の注視の下で行っていた高度の緊張を要するテストや戦闘教練がないのを寂しく思っている事を悟ったのである。
 ヴァルディーズは準備を開始し、3064年にボーイング社との契約が終了した時、彼はSSEGをサマー・ストームの名でMRBCに再登録した。また、ボーイング社はテストパイロット達の助力に感謝をして、数機の中古のW-10チペワ戦闘機をサマー・ストームに友好価格で販売した。サマー・ストームがタウラス連合国とのその最初の契約を結んだ時には、彼等は16機の戦闘機と19人のパイロットを保有していた。
 TDF(タウラス防衛軍)の第V軍団に配属されたこの傭兵達は、“サイノン”星系防衛を任じられた。その到着から僅か3日後、小規模の海賊団が迅速な襲撃をするべくジャンプをしてきた。ここで好印象を与える事を熱望していたサマー・ストームは襲撃者達のただ1隻の降下船とその貧弱な護衛戦闘機を迎撃するべく急行した。しかし、彼等は海賊達を徹底的に飛行で翻弄はしたが、その海賊の小部隊が撤退するまでの間に1機しか撃墜できなかったのであった。
 部隊のこの最初の戦闘出撃にきまり悪い思いをしたヴァルディーズは、より情け容赦のない軍事教練をサマー・ストームに課した。オフの時間の時には、パイロットの幾人かは現地の住民に対して航空スタントショーや飛行展示会を開催する事で追加の資金を調達し、また、パイロットの1人は独自の飛行学校を開きさえもした。6ヶ月後、次の襲撃部隊――彼等は以前の優に3倍の規模であった――が星系に出現した時には、サマー・ストームは前よりも良好な戦闘を実施した。8機撃墜を挙げ、1隻のトライアンフ級降下船にも多大な損傷を負わせたこの傭兵達は、僅か3機の損害のみで海賊達を撃退したのである。そして、惑星のサルベージ企業の1つの助けを借りて、サマー・ストームは損傷したトライアンフ級降下船を着陸させる事を何とか為し遂げ、それの改修も開始した。
 ここで自らの雇用主に好印象を与え続けるのを望んだヴァルディーズは、賊達をその根城の星系まで追撃する事を決断した。TDFの彼の連絡将校(この宙域内の他の部隊とは違う、この傭兵達の任務への実のある精励に満足し心に留めていた)と現地のワード・オブ・ブレイクのHPGの司教を通して、サマー・ストームは襲撃者達の基地――“アルタイアーズ・チョイス”星系内の月の1つ――を正確に特定した。第V軍団に配属されていた他の幾つかの傭兵部隊と共に動き、サマー・ストームは短時間の決戦の後に襲撃者の基地を攻め落した。
 TDFはその稀である感謝の念を示して、海賊の基地から回収された全ての航空戦力の所有権をサマー・ストームに認めた。今やパイロットよりも多くの機材を所有する事となったサマー・ストームは、惑星“サイノン”に戻るや否や現地からの新兵採用を開始した。それ以降、サマー・ストームは第V軍団の他の地上部隊と共に、惑星“アルタイアーズ・チョイス”と惑星“サイノン”の防衛を割り当てられている。海賊の活動は3069年後期を通して続いたが、ここ14ヶ月間で不断のものに近かったその襲撃は劇的に低下している。この様な傾向を作り出すのにはタウラス連合国内で活動しているワード・オブ・ブレイクの工作員達が多大な貢献をしているものであるが、サマー・ストームの様な傭兵航空宇宙部隊はいつ何時に海賊活動が再活発化しても大丈夫なように訓練と拡大を継続している。

ドラグーン・レーティング:

サマー・ストーム
 現在、完全な2個航空大隊戦力(それぞれ、トレント、ゲールと名付けられている)にまでなったサマー・ストームはそれぞれを、惑星“アルタイアーズ・チョイス”と惑星“サイノン”間を定期巡回させ、パイロット達を退屈させない様にしている。サマー・ストームは最近になりワード・オブ・ブレイクから年代物のアクエリアス級護衛艇を購入しており、伝えられる所によれば、その暗黙の協定の下、将来のある時点で少なくとも1回のROMの任務を彼等が遂行するとの事である。サマー・ストームはまた、長期契約の下で輸送用に2隻のレパードCV級と1隻のオーバーロード級を持っているが、オーバーロード級の船長は時折だが尚も通常の商業活動を実施している。
 ヴァルディーズは自分の部隊内の操縦技量を高いレベルで維持するべく、元・スタント飛行家、元・アクロバット飛行家、元・軍飛行士のみを雇用するという厳格な方針を持っている。もし、部隊に何らかの弱点が存在するとするのならば、それはゲール航空大隊の射撃経験の不足であり、そのパイロット達は自分達の命中率の不足をしばしば、自分達が撃ち出す大量の火力で以て克服しようとするのであった。


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